Q 2ヶ月前,一人暮らしの祖母が訪問販売で持病の腰痛が治るといわれ健康食品の契約をしていることがわかりました。
その後,それ以前にも次々と契約をしていたようで,押入れにはたくさんの健康食品がありました。返品できますか。

A 契約書を確認しましょう。法律で定められた記載事項が書かれていないなどの不備があれば,今からでも,クーリングオフすることができると思われます。また,次々販売の問題については契約者の判断力の低下に乗じた販売の可能性がありますので,周りの人の話や医師の診断など詳細を聞き取り,契約成立の有効性を検討する必要があります。

この事例のように,訪問販売で同種の商品・サービスを,日常生活で必要な分量を著しく超えて契約してしまった場合,過剰な部分は解約できる可能性があります。例えば,健康食品については,原則「1人が1年間に使用する量としては10か月分が目安である」とされています(公益社団法人日本訪問販売協会「『通常,過量には当たらないと考えられる分量の目安』について」参照http://jdsa.or.jp/quantity-guideline/)。そのため,1度に12か月分を契約したり,まだ6ヶ月分が未使用で残っているのにさらに6か月分を追加で契約したりした場合は,いずれも原則として2ヶ月分が過剰となりますので,この2ヶ月分を解約できる可能性があります。

また,「腰痛が治る」など,勧誘時の説明に嘘があるようです。このような場合は,特定商取引法ならびに消費者契約法による取り消しも考えられます。詳細はお近くの消費者相談窓口,弁護士会又は司法書士会に相談してください。

なお,本事例では認知症など判断力が不十分な高齢者に多い事例です。今後のことを考えて成年後見制度についても検討しましょう。

特定商取引法とは,訪問販売や,電話勧誘販売など一般に消費者被害が起きやすい取引について規制している法律です。クーリング・オフ制度(無条件解除)もこの法律による規定になります。
そのほか,事例のように勧誘時の説明が嘘であったり,事実を告げていない場合に契約を取り消すことができるなどの規定もあります。

消費者契約法とは,労働契約を除くすべての消費者と事業者間の消費者契約について規制している法律です。事業者の一定の行為により消費者が誤認や困惑した場合に契約を取り消すことができるなどを定めています。事例のように勧誘時の嘘の説明を信じて契約した場合に嘘に気づいて1年以内は取り消すことができるとの規定があります。